はじめに
不動産の相続対策で大きな効果がある対策方法の一つに賃貸住宅を建てるという方法があります。
土地は何もせずに所有しているだけだと固定資産税はかかるし、相続が発生した際は評価も高く税金の負担も大きくなる財産です。
そこで、収益を得ながら税金の対策にもなる賃貸住宅経営は不動産相続対策の王道でもあります。
ただ、不動産相続の専門家からすると、これからの時代は慎重に検討するべき対策方法であると感じています。
1、賃貸住宅が相続対策になる理由

相続税の節税において、賃貸住宅はとてもメリットがあります。
●土地評価の軽減
土地は更地の場合は路線価と地積を掛け算した金額となりますが、賃貸住宅を建てることで約2割評価を下げる事ができます。
●建物評価の軽減
建物は相続税の計算では固定資産税評価で計算されます。
一般的に新築時の建物は建築費の約6割と言われてます。
更に賃貸住宅の場合はそこから約7割の評価になるのです。
つまり、賃貸住宅は相続税の計算では実際の建築費の約4割になるという事です。
(1億円で建てた賃貸住宅の評価は約4千万円!)
●税金対策と収益の両立
この様に土地や建物の評価の減少が、財産の全体の評価を圧縮することになり相続税を節税できるのです。
また、賃貸住宅で収益もでるため相続税の納税資金も作ることができます。
これが賃貸住宅が相続対策に有効な手段であると言われる大きな理由です。
●借入による圧縮効果
現金がない方は金融機関から融資を受けて賃貸住宅を建てますが、この債務も相続時には圧縮効果となります。
金融機関としても土地を建物が担保になるため、比較的に融資が出しやすい事業と言われています。
こういった理由から1990年代から、とても多くの賃貸住宅が建てられてきました。
2、慎重に検討する必要がある理由

●サブリース・一括借上げの注意点
賃貸住宅建設の提案では、「サブリースや一括借り上げだから安心です!」という提案があります。
空室が出ても、その分を補填して毎月一定の賃料が入るという安心感があるのは事実です。
・・・が、はたして本当に安心でしょうか?
管理会社も事業です。なのであまりにも入居がない住宅については賃料見直しや、借上げの契約解除などもあり得ます。
サブリース、借上げは借地借家法が適用されるため、借主が保護されます。
借主=サブリース会社、貸主=オーナーです。
つまり、貸主からの契約解除は制限されますが、借主からの解除はいつでもできるという事になります。
この点をしっかりと把握しておく必要があります。
●収支計画のの注意点
賃貸住宅建築の提案には必ず収支計画があります。
この収支計画にも、しっかりとした把握が必要です。
収支計画は、その名の通り計画です。
賃料、借入金利、入居率、修繕費用・・・すべて仮の数字です。
そして提案されている収支計画の多くは一番良い状況で提案されているという事です。
つまり、瞬間最大風速の一番良い時を想定して提案している事が多いのです。
当然、未来の事なのでそれ以上になる可能性もありますが、逆のケースを想定しやらなくてはいけない事があります。
どれくらいまで事業として許容できるか?のシミュレーションです。
- 賃料がこれくらい下がったら?
- 金利がこれくらい上がったら?
- 入居がこれくらしか入らなかっら?・・・
これらを総合的に見て事業判断をしていく慎重な姿勢がこれからの事業判断には必要です。
まとめ
賃貸住宅を建てることは、やはり『事業』なんです。
サブリースや一括借上げが悪いという事ではありません。
しかし、必ず状況は変化するという認識を持ってください。
最終的な責任は自分自身に戻ってくる事を忘れてはいけません。
相続対策には色々な手段があります。
どの手段も、大切な目的のためのものです。
大切な目的、それは『家族が幸せに仲良く暮らしていく』事です。
相続は自動車の運転に似ています。
それは
だろう運転ではなく、かもしれない運転をしましょう!と言う事です。
・車の陰から子供は飛び出してこないだろう×→子供が飛びだしてくるかも知れない〇
・向こうの車が止まってくれるだろう×→向こうの車がでてくるかも知れない〇
家族を乗せた車で走っている時に、事故にあわない為には、何かあるかも知れないと常に想い、その対策を考えて事前に手を打つことで回避はできます。
不動産相続の『かもしれない』不安がある方は、私共にご相談ください。